本の紙目で本が開きやすくなったりするのは、本当ですか?

本は、紙目を意識して作られていた⁉

印刷会社では一般的な常識なのですが、無線綴じ冊子の製本をする際は、綴じ方向に平行に走る紙目を表紙巻きします。(下記図1参照)
頁数が10P、20Pの薄い本は、さほど問題にはなりませんが、数百頁の厚い本になると紙目の選択次第で本が半開きになり、ピッタリと開けない本になってしまいます。

そうしたことを避けるために、印刷会社では紙目を意識して、本が開きやすいように冊子の製本を心がけています。


紙目ができる理由

本にした時の紙目の選び方を述べる前に、そもそも紙にはなぜ紙目があるのか、と言う理由を説明します。

紙目は、紙を作る時に出来る繊維の方向性みたいなものですが、紙は、大量の「水」に「パルプ繊維」を溶かした液体を、高速で回転する網(ワイヤー)の上に流し込んで作られるのですが、網の上に紙の原料が流れ出す際、コンベアのように一定方向に進む流れ(噴き出し)の勢いによって、棒状のパルプ繊維が進行方向(流れ目)に沿って縦向きに整列します。

これをそのまま水分を絞り、乾燥させることで、繊維がその向きで固定されてできるのが紙目です。
ロール状の原紙をA判、B判等の全紙にカットする際に、タテ目、ヨコ目が決まります。


紙のタテ目とヨコ目ついて

紙目の方向は、A判、B判の原紙からそれぞれA判、B判の全紙をカットする際に決まりますが、A判もB判もヨコ目とタテ目があります。

(図1)(図2)の様に製品にした時の目と全紙の時の目の方向が違うことが多いために、印刷会社では製品の紙目の方向を考慮して、全判の紙目を選択しています。

例えば、A4版200頁縦綴じの無線綴じ冊子を作る場合は、(図1)の様に製本にした時はヨコ目になりますが、紙の発注はタテ目を注文しなければなりません。

一般の発注者の方は、こうしたことを意識する人は少ないでしょうが、本の印刷に携わる印刷会社では、基本中の基本として、こうした紙のセオリーに従って、紙目の選択をしています。


紙目が問題になるケース

本を作る時に、紙の目の問題が顕著になるのは、細かい点は種々色々ありますが、主に2つのケースの場合です。1つ目は、本が数百ページの厚い本になった時です。これらは綴じ方向に対して平行な目を使うのが基本です。(図1参照)

55kg・70kg程度の紙の厚さでは、ページ数が少ない本はさほど問題になることは少ないですが、紙が90kg・110kgと厚くなるにしたがって紙目に注意しないと、無線綴じの本は更に開きにくくなります。下記にその特徴を纏めてみました。

〇 紙目が綴じ方向に対し平行な目でないと、本が大きく開きにくくなります。
〇 平行でない目の本を無理に押し広げると、本が割れてしまう場合が有ります。
〇 頁数が少ない本より頁数が多い本ほど、これらの傾向が強くなります。
〇 無線綴じは頁数が増えると、表紙を厚くするのが基本ですが、表紙が厚くなると本は頑丈になり、開きにくくなる傾向があります。

第2に本が数十ページの薄い本でも、90㎏、110㎏以上の厚い紙は、綴じ方向に対して逆目を使うと、本が開きにくくなります。(図2参照)

〇 紙は厚くなるほど、反発力が強くなる。55㎏、70㎏位の薄い紙は反発力が比較的に弱いので、頁数が少ないとさほど問題になりません。
〇 無線綴じなどは、本の背が逆目になると、紙がきれいに折れないので本の背がガタガタになる。

【紙の厚さについて】

紙の厚さ(連量)主な用途
55㎏コピー用紙とほほ同じ厚さ小説、テキスト、本全般
(やや紙質が薄い)
70kgコピー用紙とほほ同じ厚さ小説、テキスト、本全般
(最も普及している厚さ)
90kgコピー用紙より少し厚い紙リーフレット、パンフレット、上製本、やや高級な本
110kgコピー用紙より2倍近い厚さリーフレット、パンフレット

一般に綴じ方向に対して逆目の本は、印刷会社では不良品として扱う会社もありますが、こうした本の紙目の特徴を知らない一般の人は、少々不便は感じても「本の開きやすさ」などは気にしないままに受け入れている人も多いのではないでしょうか。

いつも紙目を意識して印刷をする印刷会社

紙には、A列本判(通称A判)、四六判(通称B判)、菊判、ハトロン判等の規格がありますが、これは印刷会社などで加工する前の一般的な呼び方です。

製品に加工した後の呼び方では、A判、B判と2つの規格が一般的ですが、身近な商品としては、ご存じのとおり本やノートなどが、A4、B5のサイズとして普及しています。
こうしたA4、B5のサイズの本やノートなども、常に紙目を考慮して作られています。

その他のサイズも全て同じです。例えばA5判の本を印刷する場合は、(図3)の様に注文する全紙の紙もヨコ目で、製品もヨコ目になります。

前述の(図1)のA4判の本とは、逆の目になることになります。
紙目は、無線綴じや中綴じ冊子の製本では問題になりますが、チラシやポスター、ペラ物の商品にはあまり問題になりません。

紙店から印刷会社に紙が入荷する際は、必ず「タテ目・ヨコ目」が表示されます。


紙目の調べ方

紙の目を調べる方法は、「紙を破る、紙を折ってみる、紙を曲げてみる、紙を濡らす」などがありますが、このうちいくつかは印刷会社でもよく実行しています。

この中で「紙を折る」のは、紙の厚さでやや判別しにくいことはありますが、「紙を破る、紙を曲げてみる」は、紙目を調べるときに普段によく使います。

詳細は下記のとおりです。

紙を破る目に沿った方向はまっすぐ破れやすく、逆らうと曲がって破れます。
(写真1は、ほぼ巡目の敗れ方で、写真2は、逆目の破れ方です)
紙を曲げてみる軽く曲げたとき、抵抗が少なくスムーズに曲がる方が「紙目の方向」です。
紙を折ってみる目に沿って折ると仕上がりが綺麗ですが、目に逆らって(逆目)折ると、紙の繊維が壊れて表面がひび割れたり(背割れ)、ガタガタになったりすることもあります。
紙を濡らす紙を少し濡らすと、紙目と平行な軸でクルッと丸まります。

こうした紙のチェックを方法も、A3、A4など紙の面積が大きめの紙でテストするほうがより正確になります。
小さい紙になるほど判別しにくくなりますし、厚い紙になればなるほど判断が難しくなる傾向がありますので、複数の方法を試すのが良いかもしれません。


「上製本や糸かがり製本」の本の役割

こうした無線綴じ製本の弱点をカバーする製本方法として、上製本(ハードカバー)や糸かがり綴じ製本があります。

上製本(ハードカバー)や糸かがり綴じ製本は、単なる見た目の豪華さだけでなく、本の割れにくさなどの「耐久性」と見開きの良さなどの「機能性」を解決した製本方法でもあります。

無線綴じ製本はボンドと呼ばれる糊で接着するだけですが、糸かがり等は16頁や32頁ごとに紙に穴をあけて糸で締め付けて製本するために、厚い紙の弾力を緩和するほど堅牢な作りになっています。

上製本や糸かがり製本は、無線綴じ製本ほど紙の厚さや紙目の影響を受けにくいと言われています。本を作る目的によっては、上製本などは選択肢の一つとして適しています。